ゲスト 上田バロン氏(イラストレーター)、服部滋樹氏(デザイナー)/ インタビュアー 高田恵太郎


「イラストレーターになったきっかけは小さい頃から絵を描くことが好きで漠然と将来そういう仕事がしたいと思っていました。高校卒業後、美術大学には進まず大阪の専門学校へ入学。そこは絵というよりデザインを勉強する学校でした。デザインは身近な存在ではなく、絵の勉強ができるから進みました」。
―やはりそのまま好きな絵の道をまっしぐら?「イラストはデザインに密接していて専門学校の先生に『デザインがわかっていることで仕事が上手くいく』と言われました。まずグラフィックデザインに挑戦し、4年近くある会社でデザイナーとして仕事をしていましたが、個人でやっていきたいと思い退職しました。はじめは自分の作品が確立されていなくて、自分の内面を見つめながら自分らしさやオリジナリティを模索していました。やめなかったことは絵を描くことです」。

―個性的なイラストのイメージが強い人だが描き続けることで自分のイラストを見つけたのだろうか。
「それでも、クライアントもなく仕事になるはずがなくて地元大阪のギャラリーで個展を行いました。ギャラリー空間で自分の世界観を表現しようと架空の企業をテーマにしました。黒人の経営者がクマのぬいぐるみを作っていて裏ではギャングという設定です。ぬいぐるみは人との出会いで立体物化され企業ロゴまで作り、リアリティを楽しんで表現しました。これはコミュニケーションしていく中でチャレンジできる良い機会でした」。
―一生懸命やっていると応援する人が寄ってくるといわれるのはこういうことかもしれない。「駆け出しの頃、売り込みに行ったFM802は5年間のロングランの仕事になって非常に思い出深いです。個性丸出しのイラストは長い連載は取りにくいので貴重でした。アメリカ村のマクドナルドとの仕事ではアートだからこそ自由度の高い作品ができました」。
その後もゲーム会社や劇団、スポーツ用品メーカー、ミュージシャンとのコラボレーションなど幅広いジャンルと仕事をこなす中で何か意識していることはあるのだろうか。「僕は最初から計画はせず、下描きをしないで文字をレイアウトするかのように対話しながら画面を作っています。仕事をする上で表現のレベル、絵のテイストは変えたくないという強いこだわりを持っています」。
―個性を大切にしているからこそ、それを評価してくれる出会いがあるようだ。
「来春には堺市の自転車メーカーとコラボレーションした自転車が発売予定です。イラストレーションから現実の世界化、商品化した斬新なデザインの自転車は売り方、販促の表現まで自分で責任を持って世の中に出していきます」。―絵が好きだった子どもが自分のやりたいことをやり続け、どんどん自己表現し活躍する先輩の言葉は同じ道を目指している若者への強い励ましになったことであろう。

「僕は’98年にプロダクトデザイナー、映像作家、大工、シェフ、家具職人と僕の6人で衣・食・住を考えるユニット『graf』を立ち上げました。時代を振り返ると60年代に高度成長期があって80、90年代はバブル経済絶頂期。ゴージャスでギラギラしたデザインが多かったんです。その時自分は学生で生活にフィットするものがなくて自分たちで作ってみようと思いました。その頃は大量生産、大量消費の最たる時代でメーカー、作り手、消費者が縦の構造になっていましたが、フェアトレード(利益の均等配分)できる横のつながりをつくり、それぞれの想いがわかるようにしました」。
―学生の時から自分に合うものを作ってきた服部さんの現在の様子は?
「大阪、中ノ島の国立国際美術館の前に5階建てのビルの中でアイデンティティーが同じ、20代から40代の人たちと集団で活動しています。日本の伝統的な技術力や絶やしたくないデザインをリデザインして今の時代に合うものを創ったり、カフェ運営もしています。飲食店を運営しているのは外部の人と接触し、刺激を受けると創作意欲が湧くからです。例えば日本には四季の食材があり、食材ひとつから器の盛り付け方、使うランチョンマット、テーブル、イス等とイメージが広がっていきます。ギャラリーでは、現代アートやダンス、音楽のライヴイベントを開催し、出会った人たちとお酒を飲んだりと交流の場にもなっています。他に本屋やミュージアムショップも運営しています」。
―様々なジャンルのアーティスト達が自然と集まり、積極的に創作力を高めている様子が伺える。

「『graf』ではプロジェクト単位で仕事をしていて社内でプロジェクトが自由に変更できるようになっています。デザインが生まれるためには表層にあることをどうデザインをしていくか考えることが必要です。また来年で設立10年になりますが、東京やロンドンにも拠点を置き世界を相手に仕事をしています。世界で初めてライフスタイルをひとつにまとめた雑誌『Wallpaper』の中で“私たちの生活を変えてくれる10人”に選ばれ“物作り集団”の形として評価されました」。
―と憧れの人たちと共に賞賛された話を興奮気味に語っていた。「国内では大阪市より依頼を受け、会議が楽しくなるテーブルとイスを作りました。これらは普通の1.8倍の大きさがあり、座ると足がブラブラして大人が子どもになれます。世界でも有名な埼玉にあるイスの美術館にも置かれています」。
堅苦しい会議が子どもの作戦会議のようにワクワクする時間になるかもしれない。遊び心を持ったデザインはその場所に一番長くいる人のために設計しているそうだ。「このようにデザインとアートを行き来しながら活動をしています。はじめの2年半は食べられない生活でしたが、自分たちが正しいと感じていることをやり、皮膚感覚、身体が感じていることを忘れずにやってきました」。
自分のやりたいことに忠実に諦めないでライフスタイルを提案できるデザイナーはより多くの人の支持を得ていくに違いない。

高田:今日の参加者の6〜7割はデザインやアートを学んでいる学生さんだと思いますが、お二人の学生時代はどんな感じでしたか?
服部:僕は友達がいなかったんです(笑)。ロン毛でオタッキー。宝塚造形大でストイックに彫刻に没頭して、アトリエが借りられるから神戸大に行って一年半で辞めました。アート、デザイン、ファッション、音楽にも興味があってギャラリーやレコード屋さん等自分の好きな所で遊んで貪欲に情報を収集していました。
上田:僕は親が公務員で「サラリーマンになれ」と言われていました。絵をやりたいけど職業観はなくて、専門学校に行きました。まだ就職はしたくないし、3年あったら何か見つかるかなと。それと同じ方向性を持っている人、将来同じ道に進む人に会いたかった。
高田:共通しているのは好きなことをやり続けていることですね。興味があるから自然と物や人に対してアンテナを張っている。
服部:今の人たちはかわいそうですね。ネットがあるからすぐ検索ができ、プロセスがなく自分で完結できてしまう。
高田:便利だけどクリエイティビティを阻害している気がします。
服部:「graf」には小学生の時からコンピュータがあって、検索も一撃でヒットさせる人がいます。編集力が上手く、ポイントを押さえる法則を見つけています。
高田:神戸コレクションのホームページには月100万ページのアクセスがありますが、その人たちの欲しい情報をどう発信していくのかが課題です。イベントをプロデュースするとディレクションしている人がコラボして共通の目的のために参加します。これからの企業は人数が多いだけでなく、いろんな人とのコラボが必要です。バロンさんの自転車もそうですね。クリエイターは職人的な人が多いです。

上田:自転車メーカーの社長さんから「社内ではアイデアが出なかったりして、新しい風を取り入れたい」と要望があり、人の引き合わせでチャレンジすることにしました。最初は自分にできるか疑問だったので提案をして、できると判断してもらいました。
服部:世界観を完結できるということはプロデュース能力があるということですよね。
上田:自分の好きなことでないとそこまで力が入りません。
高田:スタイル観を持っていないとプロデュースはできないですね。世界観を持っていると違う分野とコラボしていく楽しみが出てきて興味の範囲が広がり、次のステップへ行けるんです。服部さんは生きていく上で欠かせない衣・食・住をユニットとして考えた、そこに気付くことはすごいことですね。
服部:バブルの時、「フィットする物がない」という時代の影響を受けています。
高田:ところで、クリエイターが集う場所が関西は少ない。これは元気が出ない要因だと思います。
服部:僕は以前銀座にあった「銀パリ」のように、そこは美輪明宏や横尾忠則、三島由紀夫、寺山修司のような芸術家が集まった場所でママがキーマンだったのですが、時代を作ってムーブメントを起こしたい。
高田:大阪にはあるけれど神戸にはない。ここ(オルビスホール)ももったいない。 ファッションの定義は広くて神戸コレクションも服だけでなくイラストや家具等と融合する部分があり「生き方」をメッセージしていきたい。それを側面から援護できれば楽しいです。
服部:みんなで映画を作るとか。
高田:映画は脚本、キャスティング、カメラ、監督等がいてプロデューサーが費用を捻出しています。アメリカでは組合が投資家を集めていますね。
服部:商業映画のハリウッドではシナリオライターが一番多く、作品化するためのソフトが開発された話を聞いてショックでした。
高田:クリエイティブとのバランスが難しいですね。それでは、最後にメッセージをお願いします。
上田:好きこそ物の上手なれ。好きだからこそ無理して頑張れる。勉強しよう、調べようと思える。最後に残るポイントです。困難があっても好きなことを頑張ってやってほしい。
服部:では、本当に好きかを自分にどうやって問うか?好きだからビジョン、明るい未来が見えてくる。探る時間も必要なので旅に出てください。
上田:客観視するために離れてみたこともありました。
高田:好きなことだけではダメなんだけど…。この続きはこの後のパーティ(第三部)でジュースでも飲みながら。どうもありがとうございました。






















































